2019年1月18日(金)にRAPIS-1やALS-1ほかを載せたイプシロンロケット4号機が内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられ、衛星の軌道投入に無事成功しました。
プレスリリースへのリンク:
http://www.jaxa.jp/press/2019/01/20190118_epsilon4_j.html
私もYouTubeで中継を拝見。着実に実績を重ねられていて、いち宇宙開発ファンとして嬉しい限りです。アーカイブはこちら。
ここから先は個人的趣味の世界かつ勝手な想像が続きますので、お暇な方のみどうぞ…。
そのイプシロン4号機のライブ中継を見返していて気になったのが、ここ。

第1段の燃焼終了から分離まで50秒も時間が空いている…。
他のロケット、たとえばH-IIAやH-IIB、スペースXのファルコン9などの打ち上げライブもよく拝見するのですが、燃焼を終えたステージは速やかに分離、次のステージに点火という流れを見慣れているせいか、燃焼時間の半分近くも分離せずそのままというのは個人的にとても気になったところです。
JAXAが公開しているイプシロン4号機の飛行計画を見ると、第1段の燃焼終了はリフトオフの108秒後(高度74km)、分離は161秒後(高度132km)となっています。計画では53秒間のマージンが設けられていますね。
1年前に打ち上げられたイプシロン3号機の飛行計画もチェックしたところ、第1段の燃焼停止と分離のタイミングは4号機と一緒でした。
イプシロン4号機のプレスリリース:
http://www.jaxa.jp/press/2018/11/20181130_epsilon4_j.html
同3号機のプレスリリース:
http://www.jaxa.jp/press/2018/11/20181130_epsilon4_j.html
ではH-IIA/Bはどうなんでしょうか。いぶき2号とハリーファサットを打ち上げたH-IIA40号機の場合、第1段の燃焼停止はリフトオフの398秒後(高度271km)、分離は406秒後(高度283km)という計画。間隔はわずか8秒。
H-IIA40号機のプレスリリース:
http://www.jaxa.jp/press/2018/08/20180828_h2af40_j.html
こうのとり7号機を打ち上げたH-IIB7号機では、燃焼停止が347秒後(高度184km)、分離は354秒後(高度189km)と、7秒しか間がありません。
H-IIB7号機のプレスリリース:
http://www.jaxa.jp/press/2018/07/20180713_h2bf7_j.html
ここからは私の想像ですが、イプシロンロケットの長いマージンは、固体燃料ロケットならではの制約に由来しているのかもしれません。
現代の打ち上げロケットは、燃料の種類ごとに液体燃料ロケットと固体燃料ロケットに分けられます。
液体燃料ロケットは燃料(水素、ケロシン、メタンなど)と酸化剤(主に酸素)を使います。H-IIA/B、ファルコン9、アリアン5、かつてのサターンVなどは液体燃料ロケットです。エンジンの種類にもよりますが、燃焼中のパワー調整や、軌道上でのエンジン停止・再点火が可能となるのがメリット。燃料を送り込むポンプ、再点火時に燃料をタンクから押し出すためのガスなど、構造が複雑になりがちなのがデメリットです。
いっぽう固体燃料ロケットは、燃料と酸化剤を混ぜ合わせた物質を燃やし、そのガスをノズルから噴射させて進みます。ロケット花火と基本的な仕組みは同じです。液体燃料ロケットよりも構造を簡略化できるのがメリットですが、一度火を点けたら燃料が燃え尽きるまで止まれないのがデメリットです。
イプシロンロケット4号機は、全部で4段あるステージの第1段から第3段まで固体燃料を使っていますが、 今回私が気になった「燃焼終了から分離までの時間が長い」のは、固体燃料ロケットは燃焼中にパワーを調整できないからではないかと予想しています。
液体燃料ロケットであれば、次のステージの点火に最適なタイミングぎりぎりまで今のステージを使い続けられるように、パワーや燃焼時間の調整によるコントロールが可能です。アポロ13号の打ち上げで、第2段に備わっているJ-1エンジンのうち1つが停止してしまったときも、燃焼時間を予定よりも長くすることで切り抜けました。
ですが、固体燃料ロケットではパワーの調整ができません。燃焼終了から分離・次のステージの点火までの時間を短く設定していると、何らかの理由で第1段の燃焼時間が変化したときに、第2段を最適なタイミングで点火できなくなるかもしれません。
そこで、液体燃料ロケットなら「細く長く」エンジンを噴射するところを「太く短く」設定し、燃焼終了から次のステージに点火するまでの時間を長めに確保しているのではないか…という想像のお話でした。
ライターなのだから取材して確認するべきかもしれませんね、趣味全開の領域ですが…。